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写真を「きれい」にするとは?

レタッチをする目的は人によって様々だと思うけれど、動機のひとつとなるのが「きれいにしたい」だろう。しかしながら、この「きれい」という言葉が、レタッチでは問題になってくる。

「きれい」は千差万別で、レタッチにおいては絶対的な指針にはなり得ないということ。つまり、レタッチの第一歩は、写真をきれいにすると考えるのではなくて、「どうしたいのか」と考えることから始める必要がある。

「どうしたいのか」「なにがしたいのか」「どんな写真にしたいのか」いろいろないい方はあるけれど、要は「仕上がりのイメージをもつ」ということ。漠然と「きれいに」と考えるのではなく、「明るくしたい」「鮮やかにしたい」というように、できるだけ具体的な希望を考えていく。「夕暮れの寂しい裏路地」のようにテーマを考えてもかまわない。とにかく、色がイメージできる状態にしてからレタッチをはじめないと、適当に機能をいじるだけのその場しのぎの作業になってしまい、目指している「きれい」とは異なる仕上がりになりかねない。

極端な例を挙げるなら、ローキーな状態を目指してレタッチしていたけれども、いつの間にか明るいハイキーな写真になってしまった、なんてこともあり得るだろう。レタッチでは、余計な作業を施すごとに画質は劣化していくし、ローキーからハイキーヘというように相反する調整を施すと、画質は極端に落ちてしまう。

このようにやみくもにレタッチを始めるのはレタッチが上達しないだけでなく、写真にも悪影響を及ぼす危険があるので注意すること。まずは、しっかりと目的意識をもつことからはじめよう。

デジタルのきれいを考える

よいレタッチとは色を仕上げるだけでなく「画質」も整えなければならない。実は、これが意外と盲点で、多くの場合、ディスプレイ上で全体を見て満足したら終わりにしてしまうことが多いようだ。

これのどこがいけないのかというと、ディスプレイで全体を見ているだけでは「間引かれた情報」で写真を見ているに過ぎず、「粗」を見つけることができない点にある。色に関しては「全体表示」で確認して問題ないけれど、滑らかな階調部分の画質の荒れやトーンジャンプ、階調のつぶれや色の飽和、ノイズの有無など、色以外にも注意しなければならないことはたくさんあり、それらを確認するには「適切な大きさ」で見る必要がある。

最初からこれらのすべてに注意することは難しいので、まずは「トーンジャンブ」と「階調のつぶれ」だけでも注意するようにしておきたい。トーンジャンプとは、滑らかな階調(明暗や色の変化)の中に生じた縞模様のことで、部分的に階調の連続性が途切れたり反転したときに生じる現象のこと。無理な補正を行うとトーンジャンプが生じやすい。

階調のつぶれは、白や黒などの同じ色で塗りつぶされてしまった部分のことだ。階調(明暗の変化)が全くない状態で、特別な意図がない限りは、写真的にはあまりよい状態とはいえない。階調のつぶれはともかく、トーンジャンブは写真全体を表示した状態では正しく判断できないこともある。写真を50%か100%(等倍表示)の大きさで表示して、ピクセルの間引かれる量が少ない状態で確認することが重要だ。

トーンジャンプを見逃してしまうと、プリント時に嫌なまだら模様が生じてすべての作業が台無しになってしまう危険もあるので、細心の注意を払うようにしよう。

ちなみに、ピクセルが間引かれるとはどのような現象なのかというと、デジタルの写真は点(ピクセル)で構成されていて、写真の1ピクセルをディスプレイの1ピクセルで表示した状態が100%の等倍表示。これが写真の状態が完壁に把握できる表示倍率となる。

そして、写真の2ピクセルをディスプレイの1ピクセルで表示した状態が50%表示。写真の4ピクセルをディスプレイの1ピクセルで表示した状態が25%表示というように、倍率が小さくなるほど、ディスプレイ上では写真を構成している「複数の点をまとめて表示」するため、正確さは失われてしまう。

しかも、41%などの半端な表示倍率ともなると、写真のピクセルが割り切れずに「間を埋めるピクセル」が作られることになる。これが補完処理で、階調の連続性やシャープネスなどを確認するときに問題となる現象だ。このあたりの仕組みを覚えておけば、表示倍率の大切さが理解できることだろう。

使用目的を考慮する

もうひとつ、レタッチを始める前に考慮すべき点を紹介しよう。これは写真をレタッチする「目的」にもなるのだが、写真の使い道をはっきりさせておくということ。仕事用の写真ならその写真が使われる状況(商業印刷なのかWebなのかなど)を、個人的な作品なら、プリントするのかディスプレイで見るのかを決めてからレタッチを始めるようにしよう。

目的が分からずにレタッチしてしまうと、たとえばモノクロ写真でよいのにカラー用の補正をしてしまう、などのようなことになりかねない。また、プリント用の写真なのに、ディスプレイ向けの彩度の高い仕上がりにしてしまうこともあるだろう。つまり、厳密にいえば写真の使われ方によって、色や階調だけでなく「データ」としての仕上げ方が異なってくるというわけだ。

レタッチを始める前にこの辺りを考慮することで、余計な作業を施すことなく「最短の処理」で目的の状態に仕上げられるし、作業や処理数が少ないほど写真は品質を保った状態にしておくことができる。要するに、レタッチするときは目的によって仕上げ方を変える必要があり、そのような理由からも、レタッチした一枚の写真を様々な用途に使うことは避けたほうがよいということでもある。

レタッチを始めたころは、このあたりのことがよくわからずに、一度レタッチした写真を後生大事に使いまわすこともあるけれど、これはあまりお勧めできない。ディスプレイにはディスプレイ向けの、プリントにはプリント用の、写真展などの展示には展示に適した仕上げ方をする必要があるのだ。

となると、作品をストックしていくにはどうすればよいのか悩むかもしれないが、これは「見せるためのレタッチ」を施しておけはよいだけのこと。プリントで保存しておきたいなら最高のプリントになる状態で、ディスプレイ上で見るのならもっともよく見える状態でアーカイブしておけばよい。

そして必ず、レタッチ前の「元のデータ」も一緒に保存しておき、別の用途で使う写真が出てきたら、元のデータから「目的に合わせて」仕上げ直せばよいだろう。その際、Photoshopなどで調整レイヤー(何度でも補正がやり直せる機能)を使って補正しておけば、目的に合わせた修正も簡単に行えて便利だ。

写真を使うたびにレタッチするのは面倒と思うかもしれないけれど、レタッチのテクニックは日々向上していくので、昔レタッチした写真よりもよりよい状態に仕上がる可能性もあるということを忘れずに。

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