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写真をレタッチする目的を明確にする

レタッチする環境が整ったら、いよいよ実作業に入るわけだが、レタッチの前にやるべきことがある。それは、これからレタッチする写真をよく観察すること。そしてどこをレタッチするのかを考えること。

レタッチする「目的」レタッチする目的を明確にしておかないと、よいレタッチは施せない。そこでまずは「レタッチの方針」を立てるわけだが経験的に「第一印象」で感じたとおりに仕上げていけばうまくいくことが多い。たとえば、パソコンで写真を表示して暗いと感じたら明るくすればよいし、色が変と感じたら色を補正すればよい。

写真を見つめ続けると、目がその色に慣れてしまい補正ポイントを見失う恐れがあるので、第一印象で感じたイメージは即座に書き取っておくようにしよう。書き取るメモは自分でわかれはどのような書き方でもよくて、「電線を消す」や「肌のくすみ」「空にシアンを足す」などの簡単な記述でかまわないだろう。

この段階では、レタッチで実現できるかどうかなど気にする必要はなく、とにかく感じたイメージをどんどん言き記しておくことが大切。そしてこのメモを元にして、どのようなレタッチを施すのかを考えれば、おのずと方針が立てられるというわけだ。

よく、写真を前にして途方に暮れるひとがいるけれど、それは「レタッチの方針」、すなわち、写真から受けた第一印象を重視していないからに他ならない。仕上がりのイメージがもてていればなんらかの作業は行えるはずで、たとえ簡単な作業でもそれらを積み重ねることで複雑な仕上がりにできるのもレタッチの醍醐味だ。

ただし、ひとつだけ忠告を。とても大切なので、読み飛ばさないでもらいたい。凡帳面なひとだと、プリントした写真にイメージを書き込みたくなるかもしれないけれど、慣れるまではやめたほうが無難だ。写真に書き込むのではなく、単なるメモとして残すか、簡単なイラストを描いてそこに記述しておくほうがよい。

どうしても写真に書き込みたいときには、モノクロでプリントしたものを使うようにしよう。実は、カラーのプリントに書き込んでしまうと、プリントの色を参考にティスブレイ上の写真を補正してしまうため、レタッチで色を崩してしまう危険がある。これは、ディスプレイとプリントの色が完全には一致しないのが原因で、そのような理由からも、カラーのプリントを見ながら補正することは避けるべきだろう。

仕上がりがイメージできないときは

写真によってはどうしても仕上がりがイメージできないこともあるかもしれない。また、第一印象で「これでよいのでは」と納得してしまう写真もあるだろう。

そんなときは無理にレタッチする必要はなくて、そのままの状態で「完成作品」にすればOK。私に写真を見せに来るひとたちにもそのように提案している。意味のないレタッチは画質を落とすだけなので、する必要はないと。しかしながら、たいていは「いや、でもこのままでは」と否定的な言葉が続くことが多くて、「撮ったままの状態=仕上がり」にするには納得できないといった様子だ。

明確に仕上がりがイメージできない理由にはいくつかあって、写真そのものには満足していても「印象的ななにか」が足りないと感じている場合。そして、「なんとなく」と感じていても具体的に指摘できないという場合などが主な要因だ。前者の例は少々面倒なので、まずは後者の解決方法から紹介しよう。

なんとなく写真に納得できないときには、仕上がりをイメージするのではなく、「不満な点」を探すことに集中するとレタッチの方針が立てやすくなる。たとえば、陰の濃さや、邪魔ななにかが写っていないか、部分的な明暗や色は適切か、色のバランスはおかしくないかなど、写真の粗を捜してみよう。

そして、些細なことでも気づいたら書き記しておき、そのメモと写真を見比べることで、レタッチの方針を立てていけばよい。写真をよくする方向はイメージできなくても、ダメな部分を探すと意外と気づくもので、ポジティブな要素を伸ばすのではなく、ネガティブな要素をつぶしていくように頭を切り替えればよいのだ。

筆者の場合には、依頼された写真を仕上げるときはこの考え方をすることが多くて、まずは「ダメな部分」を探し出して処理してから、「よい部分」を伸はすことで作品のクオリティを上げている。そして、依頼主のこれまでの作風に合わせた仕上がりにするだけでなく、フィルム世代のカメラマンならフィルムの階調感が出るように、デジダル世代ならデジタルっぽい鋭さを出すなど、多少の演出を施す場合も多い。

ただし、このあたりの演出は「作品のルール」に従わなければならないので要注意だが。話は逸れてしまったけれど、不満点を探すことでレタッチの方針が立てられることは理解してもらえたと思う。では次に、印象的な要素を満たすようなレタッチの方針の立て方に関してだが、これは次節で紹介するとしよう。

写真を演出するということ

多くの場合、写真のレタッチは「実風景」の色彩を再現するのではなく、「記憶色」を再現する作業になる。スタジオで撮影してその場でレタッチするならともかく、スナップや風景写真、ポートレートなど、ほとんどが撮影してから自宅でレタッチを施すことになるので、当然といえば当然。

このとき、写真の仕上がりには不満はなくても、どことなく物足りず、レタッチしたくなることがある。写真にネガティブな要素があるわけではなくて、純粋に「物足りない」と感じている場合だ。これは多くの場合、撮影時に感じたインパクトや印象が写真から感じられないためであり、改善するには「印象的」な演出を施す必要がある。

つまり、撮影したとき、なにに対して感銘を受けたのか、を考えるということだ。わかりやすい例としては、光がまぶしく射しているシーンだったのに、単に明るい写真になっている場合などがあるだろう。光がまぶしい、すなわち「ダイナミックなイメージ」だったにもかかわらず、写真ではそれがうまく再現されていない場合だ。

このような写真に必要なのはダイナミックに感じさせるための「演出」で、はじめのうちはなかなかイメージしづらいものがあるかもしれない。というよりも、印象的な写真をたくさん見て、どのような仕上げ方をすれば効果的なのかを覚えるほかないだろう。

このように、写真自体にはなんら問題がなくても、ちょっとした補正を加えることで劇的によくなるケースもある。そしてそれは、たくさんの作品を見て自分で身に付けないといけない感覚でもあるので、レタッチのテクニツクばかりを追求せず、いろいろなものから影響を受けるように視野を広げることが大切だ。

写真だけでなく、映画や絵画、アニメや漫画など、「演出」の参考になる作品はたくさんあるし、ゆくゆくはその演出が個性として作品に反映されていく大切な要素でもある。結論からいえば以上のようなことなのだが、このままでは問題を投げかけただけでなんの解決策も提示してはいないので、汎用的な手法を紹介しておこう。

印象を高めるひとつのテクニックとして光と陰の再現がある。写真全体に対して、光の当たっている方向を明るく、その反対側を暗くすることで写真全体の立体感が増し、作り出した明暗差がダイナミックなイメージを掻き立てるという補正だ。写真の四隅が暗くなっている「トンネル効果」も印象を高める効果のひとつだけれど、テーマとなる部分に光を当て、それ以外は暗めに補正する手法はレタッチにおいて常套テクニックといえる。

どこで終わりにするか

さてレタッチの方針の立て方はわかってもらえたことと思うが、次なる問題は「終わり」のタイミングだろう。これははっきりいって、難しい。時間があれはあるほど手を入れたくなってくるし、手を入れるほどに細かな部分が気になり始め、終わらせるきっかけが掴めないこともあり得るためだ。

仕事用の写真なら、納期がありそれまでに終わらせなけれはならないのでわかりやすいのだが、自分の作品ともなるとそう簡単にはいかない。ずるずると手を入れ続けてしまう可能性もある。

では、どうやって終わりを見極めるのかというと、簡単なのが複数の写真を並行してレタッチするという方法だ。たとえば、2枚の写真を同時にレタッチしていく場合、当然ながら写真を入れ替えながらの作業になる。1枚の写真を見続けてレタッチしていると、徐々に細部が気になり始め、必要のない調整を施す危険がある(これが終わらない理由でもある)けれど、ある程度レタッチが済んだところで写真を変更することで「感覚がリセット」され、新たな目で写真が見られるようになる。

作業する写真を替えたとき「不自然な色」や「イメージにそぐわない部分」を見つけたら、それらを修正していき、細部を探さないと見つからなくなった時点で終了にすればよい。

まずは、これが第一歩。そして、仕上げた写真は必ず日をおいて確認し、それでも違和感がなければ完成とすれはよいだろう。時間を空けて写真を確認するのは、レタッチした直後は目が補正した色に慣れているためで、時間を空けることで色に対する感覚を戻し、冷静な目で確認できるようにするためだ。そしてたいていは、レタッチ直後の写真は強めの補正が施されているので、全体的に補正を弱める方向で微調整することになる。

撮影時間と統一性の考慮

レタッチする上で知っておきたいこと一のひとつに、撮影時間と色調の統一性の問題がある。これは、デジカメならではの問題なので、もしかしたら古くからの写真愛好家にとっては思いもよらないことなのかもしれない。

デジタルカメラでは、色(ホワイトバランス)は撮影者が決めるものであり、どんな状況でも自然な色が再現できるように「オ-トホワイトバランス」に設定していることも多いだろう。ところが、この設定がレタッチの方向性を見失わせる危険があり、しかも、仕上げた作品から「臨場感」が伝わらない要因にもなってしまう。

たとえば、夕焼けの中で撮影した写真があったとすると、オートホワイトバランスに設定していると夕焼けの雰囲気は補正され、普通の写りになってしまう。レタッチするときにこの写真を見て物足りないと感じても、それがなんなのかわからないかもしれないし、意図的に夕焼けの雰囲気を再現して色調を崩してしまうこともあるだろう。

また、オートホワイトバランスで色を補正するということは、撮影の季節や時間、天気などの違いをなくしてしまうということでもあり、冬の朝なのか夏の朝なのか、昼なのか、曇りなのか晴れなのか、それらの要素を写真から伝わけにくくしてしまう恐れもある。

もちろん、オートホワイトバランスが便利なシーンもたくさんある。しかしながら、レタッチする上で「臨場感」はとても大切な要素なので、できれば「太陽光」にして現場の雰囲気を抑えたカットも撮影しておきたい。補正するときには、その色を参考に仕上げれば、季節感や時間のイメージを出すことができるようになる。

そしてそれは、写真から受ける印象としてとても大切な要素でもあるのだ。また、写真を個別に補正していると陥りやすい失敗として、色調の統一性を忘れてしまうという問題がある。1例をあげるなら、時間を空けずに撮影した写真を補正した結果、本来なら同じ色や雰囲気にならなければおかしいはずなのに、全く異なる色調に仕上がっているという場合だ。

もちろん、それを意図しているのなら別だが、色調の統一性を忘れると、同じ場所で撮影した写真とは思えなくなるので注意すること。撮影時間の近い写真を補正するときには、色を揃える必要があるのかどうかも前もって確認するようにしよう。

さて、これでレタッチに大切なことがまたひとつ登場した。「仕上がりイメージ」「レタッチの設計」「終わらせ方」、そして「時間と統一性」だ。時間と統一性はレタッチ本などでもあまり語られることがないので、覚えておいて損はないだろう。きれいなだけの写真はたくさんあるけれど、できることなら「その先」を見据えて、撮影現場の雰囲気や臨場感が伝わるようなレタッチを模索していきたい。

レタッチのルールと注意点

海外の広告で一過度のレタッチ」が問題になっているらしい。写真が元の状態とかけ離れているために誤解を招く、ということのようだ。商業的な写真では、程度の大小にかかわらず、写真を「誇張」したり「嘘」を再現している場合があるのも事実。

たとえば、ポートレートの撮影では、シミやそばかす、しわなどを消しているし、場合によっては顔立ちや体型を修正することもあるかもしれない。とくに商品写真の場合、「撮影」と「レタッチ」の両方を駆使してよく見せるための努力を行っているので、実物よりも美しく見えるのは明らかだろう。

中には建築写真のように、建売住宅と注文住宅では写真から削除してよいものダメなものが決まっている場合もあるけれど、多くの場合、レタッチは野放し状態だ。つまり、レタッチする側のさじ加減で決まってしまうということでもある。

明確な基準がない以上、自分の写真をどのようにレタッチしても構わないということになるけれど、やはり「自分なりのルール」は決めておくべきだろう。分かりやすい例が「邪魔者の消去」で風景写真の場合には電線を消すとすっきりしても、消した時点で実風景とは異なりフィクションになってしまう、という問題。

これを許すか許さないか。自分の作品なら、それは自分が決めればよいことだ。また、ドキュメントの場合には、明暗は補正しても、ものを消したり足したりは絶対にしないというルールもあるかもしれない。ポートレートの場合なら、撮ってもらった当人が見て嫌に思われない程度の修正ならOKというような線引きも考えられるこのように、ある種のルールを設けておかないと、レタッチで仕上げた作品は「写真」ではなく「絵画の一種」になってしまう恐れがあるし、見る側にも「作った写真」と思われてしまう可能性が高い。

それを狙った仕上げ方もあるだろう。しかし、写真としての一線を守りたいなら、「やってよいことダメなこと」を自分なりにまとめて、「レタッチのルール」を作っておくことが大切だ。ちなみに私は、クライアントがいる場合には先方のルールに従い、自分の作品に対しては写真という枠を外れてもよいと考えている。それが、レタッチの醍醐味でもあるわけだし。

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