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部分的に補正する方法

部分的に補正できる機能としてすでに「調整レイヤー」を紹介しているが、ここではもう少し、部分補正を実践的に考えてみよう。まずは、部分補正を行うメリットとデメリットから。メリットはもちろん、「イメージどおり」の写真に仕上がるという点。

たとえば、被写体に露出を合わせると背景が明るくなりすぎるようなときには、背景の露出だけを抑えることで被写体も背景も適切な露出に揃えることができる。また、モノクロの中に部分的にカラーの範囲を作るなど、部分補正を積極的に使うテクニックも考えられるだろう。そして更なるメリットが、部分補正を理解していれば、レタッチ後の仕上がりを予測して撮影できるようになるという点。

たとえば、先の背景が明るくなり過ぎた写真の場合には、レタッチでカバーできる以上に露出オーバーな状態ではきれいに仕上がらないことがある。しかしながら、部分的な補正を意識して背景の露出を抑えたカットも撮影しておけば、(被写体も同程度に暗くなるが)部分補正で被写体も背景も救済できるというわけだ。

このように、レタッチでできることを知っていれば、撮影時に「保険」がかけられるというメリットも覚えておくとよいだる-つ。そして、部分補正のデメリットが「テクニックが必要」という点だ。通常の補正よりも使う機能が増えるし、なによりも補正した場所と補正していない場所が違和感なく馴染んでいることが重要。そのためには、色調のバランスを見る目と、補正機能を使いこなすテクニックが必要になってくる。というわけで、部分補正に関して少しずつ紹介していくことにしよう。

補正の強さと範囲に注意

言葉は悪いかもしれないけれど認分補正はごまかしのテクニックだと思う。つまり、補正した場所をいかに気付かせないかが大切で、これが実現できれば「自然な写真」に仕上がっているという証でもある。部分補正のポイントはふたつ。ひとつは「補正の強さ」で、もうひとつは「補正の範囲」。

この強さと範囲をデリケートに調整して写真に手を加えると、写真として破綻のない色調で仕上げられるようになる。ちなみに、補正の強さに関しては簡単な確認方法がある。レイヤー機能で元と補正後の状態を「瞬時に切り替えて比較」することと、「時間を空けて」写真の色調を確認すること。前者の写真の表示を瞬時に切り替える方法は、色調が変化した場所に着目できるので不自然さを感じ取りやすい。

比較した結果、仕上がりに違和感があるようなら補正したレイヤーの不透明度を下げて補正を弱められる点もメリットだ。また、もうひとつの時間を空けて確認する方法は、簡単で実践的なのでぜひ実行してもらいたい。どの程度の時間を空ければよいのかは一概にはいえないが、少なくとも数時間はパソコンから離れて目を休ませるようにしよう。

レタッチしていると色に目が慣れてしまい、作業を続けるにしたがって補正が強まる傾向があるけれど、時間を空けることで色の感覚が戻り「冷静」に仕上がりが確認できるようになる。「冷静な目」で見て写真に違和感がないなら、その時点で完成としてよいだろう。本書はレタッチの概論的な要素も含んでいるので、部分補正に関してもう少し深く考えてみよう。

レタッチ作業の中で部分補正を行う場合、おそらく「写真全体を補正」してから、「不満な部分を補正」するのではないだろうか。しかしこのとき、「相反する補正」を行わないようにしなけれはならない。具体的には「全体を明るくした後に部分的に暗くする」などの処理は画質を劣化させる可能性があるので避けたい。このような場合は、「調整レイヤー」を使い、明るくしたい部分と暗くしたい部分を個別に補正すれば無用な階調のつぶれや画質劣化を避けることができる。

それともうひとつ、部分補正を繰り返すときには「補正の境界」にも注意しよう。とくに部分補正の重なる辺りでは色調が崩れやすく、そのまま補正を続けると荒れが目立ち写真として破綻しかねない。レタッチの本ではあまり語られないことだが、部分補正では「補正の境界」にも着目して作業すると自然なイメージで高品位な作品になると覚えておこう。

補正の境界の処理

ここでは部分的に補正するための「範囲の作り方」について考えてみよう。まずは、レタッチ本などでもお馴染みの「バス」や、自由な形状で描ける「選択範囲」を使う方法から。これらの機能で作った補正範囲の特徴はエッジがはっきりしているという点。つまり、補正した場所/しない場所が明確に区切られるため、同じようにエッジが際立った被写体によく使われる。

たとえば、全体にピントの合った建築物や模型など。直線や曲線で構築された範囲を補正するにはこの方法が効果的だ。もっとも、選択範囲で被写体を選択するということはあまりなく、ほとんどの場合は被写体に沿って「パス」を作り、パスを選択範囲に変換してから補正を行う、という流れになる。

要するに、パスを使おうが選択範囲を使おうが最終的には同じということ。そのような理由から、多くのプロは範囲が修正しやすい「パス」を使用している。パスを使う方法のデメリットは、ぼやけた被写体が選択できない点と、複雑な形状を選択するのに手間がかかるという点。たとえば、アウトフォーカスの被写体や、葉の密集した樹木、風でなびく髪の毛など。

これらをパスでトレースするのは至難の業だ。パスでは選択できない「境界が暖昧」な範囲を補正したいときには、「ブラシツール」が用いられる。自然風景の中の一部分を補正したり、マクロで撮影した花のようなぼやけた被写体を補正する場合には、この方法が最適だ。デメリットは、フリーハンドで作業するために補正のムラが出やすい点と、補正の境界を暖昧にするためにブラシのボケ足や大きさを適切に設定しなければならない点。

どちらも写真に合わせて調整しなければならず、ある程度の経験が必要だ。他にも、「グラデーション」を使って部分補正を行う方法もあり、これは空のように滑らかに階調が変化している部分などによく用いられる。このように、輪郭がはっきりした部分なら「パス」で選択し、暖昧にぼかしたいときは「ブラシツール」、滑らかに補正を変化させたいときには「グラデーション」と使い分けると効果的だ。「調整レイヤー」で補正したレイヤーに対し、これらの機能を使い一レイヤーマスク」に描画することで部分補正が実現できる。

パスを使った部分補正の実践

パスを使って部分補正を行うには「パスの扱い」が仕上がりを左右する。ここではPhotoshop CS/CCシリーズを例に解説。「パス」とは「ペンツール」を使って描ける「線画」のこと。

ベジエ曲線などとも呼ばれ、ラインを湾曲させて図形を描画する機能だ。「ペンツール」で描くラインは、設定によって色の付いた図形にもできるし、輪郭だけのパスとして記録することもできる。また、合成などの切抜きにもパスが使われるなど、ペンツールの扱いを覚えておくとレタッチにはなにかと便利。

そして「パス」は選択範囲に変換することができ、その選択範囲を使い部分的な補正が行えるというわけだ。ちなみに、切り抜き合成するときには、パスから選択範囲を作り、コピー&ぺーストすればOK。パスで部分補正をするときの作業の流れは、①補正したい範囲をパスで囲み、②パスから選択範囲を作り、③「調整レイヤー」を使って補正、となる。これで「調整レイヤー」の「レイヤーマスク」に選択範囲が反映され、パスを描いた部分だけが補正される。

ただし、このままでは補正の境界がクッキリと目立つことがあるので、レイヤーマスクに対して「ぼかし(ガウス)」フィルターでぼかしたり、Photoshop CS5以降なら「マスク」パネルにある「ぼかし」機能で描画したマスクのエッジを柔らかくぼかして馴染ませるとよいだろう。また、パスで作ったマスク画像に対して「ブラシツール」で修正を施すことで、より自然な部分補正にすることもできる。

このあたりの処理は写真の状態を確認しながら行うと効果的だ。パスを使った部分補正で「やってはいけない」ことは、「調整レイヤー」ではなく「通常の補正機能」で補正すること。

つまり、選択範囲に対してPhotoshopシリーズの「イメージ」メニューにある機能で補正してしまうと、写真が直接描き換えられ補正の境界を馴染ませられなくなってしまう。あらかじめ選択範囲をぼかしておく(=滑らかに部分補正できる)こともできるが、部分補正は試行錯誤の繰り返しになるので、必ず「調整レイヤー」を使い元の写真は直接加工しないようにしておこう。

ブラシツールを使った部分補正の実践

おそらく、部分補正で頻繁に使われる機能が「ブラシツール」だろう。ブラシツールは「パス」のように操作に慣れる必要もなく、扱いやすい点が特徴だ。部分補正におけるブラシツールの使いどころは、補正した「調整レイヤー」の「レイヤーマスク」に描画したり、画像を部分的にマスクする場合など。

後者の作業はPhotoshopでは「クイックマスク」と呼ばれ、部分補正によく使われるテクニックなので、ブラシールともども使い方を覚えておくようにしよう。ブラシツールを使った部分補正にはいくつかの方法があるけれど、分かりやすいのはやはり「クイックマスク」を使う方法だ。

先に「調整レイヤー」で補正してから「レイヤーマスク」で必要な部分だけに制限してもよいのだが、この場合、補正時には写真全体の色調が変化してしまい、不慣れなうちは補正の良し悪しが判断できない場合もある。というわけで、実践的な部分補正方法として覚えておきたい。

作業の流れは、①クイックマスクでラフに補正範囲を選択し、②「調整レイヤー」で補正して、③「レイヤーマスク」を修正して仕上げる、となるだろう。ブラシツールについてもう少し説明しておくと、設定で重要なのがブラシの「形状」と「サイズ」で、形状は必ずボケ足のあるものを選ぶこと。

エッジのはっきりしたブラシを使うと、部分補正の範囲が塗り絵のように目立ってしまう。また、写真によっては小さなブラシで繊密に部分補正するよりも、大きなブラシで補正したし場所の周囲も含めて大きくぼかしたほうが自然に仕上がることもある。とくに強めの補正をする場合にこのテクニックは効果的で、ぼやけた部分は補正が徐々に弱まるため、補正の有無(境界)が自然に変化させられる。

グラデーションを使った部分補正

補正の範囲を滑らかに変化させたいときに便利なのが、「グラデーション」を使ったマスク描画だ。「パス」や「ブラシツール」を使う場合と同様に、「調整レイヤー」で補正したレイヤーの「レイヤーマスク」に対してグラデーションを描画すれば、ムラのないきれいな色調の変化が得られる。

たとえば、空の写真に対して上空に向かうほど色濃く補正したり、風景写真に対してサイドから光が当たっているように明暗の変化を付けたりする際にこのテクニックは効果的だ。また、描画するグラデーションのタイプを変える(双方向や円形など)ことで、様々に補正範囲をぼかしたり馴染ませることができるようになる。

補正範囲を「ぼかす」という点では「ブラシツール」と似ているが、「手」で描画するためにムラが生じやすいブラシツールと異なり、規則的に補正を変化させられる点が特徴。グラデーションを描画するシールの設定に関してだが、部分補正の場合なら「黒から白」へのグラデーションを使えばOK。

あとは、補正する範囲に応じて直線的なグラデーションか円形のグラデーションかを決め、マスクに描画すればよい。もちろん、マスクのグラデーションをブラシツールなどで修正してもかまわない。このあたりは、補正の状態を見て臨機応変に対処しよう。

グラデーションを使った部分補正の具体的な作業方法に関してだが、ブラシツールと同じように「クイックマスク」を使う方法もあるが、先に「調整レイヤー」で全体を補正してから「レイヤーマスク」に描画したほうが補正の方向が分かりやすいかもしれない。クイックマスクで黒から白のグラデーションを描画した場合には、グラデーションのどちらに向かって補正が弱まるのか慣れるまで分からないためだ。

その点、先に補正して後からマスク描画すれば、補正の方向も範囲も一目瞭然。ちなみに、グラデーションを使う部分補正のデメリットがあるとすれば「補正範囲が広がる」点で、パスやブラシッールを使う場合のように被写体を重点的に補正することは難しい。

また、補正範囲が広がるということは「他の補正への影響」もあるということなので、補正が重なった部分で意図しない色調が表れる可能性もある。したがって、はみ出た補正をどう処理するか、補正の範囲が気にならないかどうかが、この機能を使う上でのひとつの判断基準となるだろう。

職人技の覆い焼き 焼き込みシール

とても扱いが難しい機能だが使いこなせれば心強いシールになるのが、Photoshopに搭載されている「覆い焼きシール」と「焼き込みシール」だ。どちらも、ブラシを使ってドラッグした部分の明暗を調整する機能で、「覆い焼きシール」は明るく、「焼き込みシール」は暗くすることができる。

ただしこの機能、写真を直接加工してしまうのでとても危険な機能でもある。補正の状態がしっかり見極められないと、不自然な明暗になるだけでなく階調を崩してしまいかねないという代物だ。しかも、調整レイヤーのように試行錯誤で作業できない一発勝負的な機能でもあるので、使いこなすにはまさに「職人技」が必要になってくる。

にもかかわらずこの機能を紹介するのは、明暗調整の「最後の砦」でもあるから。覆い焼きや焼き込みシールは、ハイライト、中間調、シャドウに対して個別に明暗調整ができるため、たとえば、ポートレートで肌のハイライトをわずかに明るくして透明感を出す、などのようなデリケートな補正が施せる。

しかも「ペンタブレット」のような筆圧感知のツールを使うことで、指先の力加減で明暗調整が行えるというとてもアナログで、写真向きの機能でもある。「覆い焼き/焼き込みツール」が優れた、なおかつ危険なシールであることが分かったところで、この機能を使うときのコツを紹介しておこう。この機能は写真に直接加工を施すタイプなので、調整レイヤーで補正した状態で使うことができないデメリットがある。

また、直接加工するということは、元に戻すのが困難な点も問題だ。では、どうすればよいのか?レタッチ作業では安全のために常に元に戻せるようにしておきたいので、「複製したレイヤー」に対して調整を施せば問題なし。これなら、失敗したらレイヤーを破棄すれば済むし、補正が強すぎたらレイヤーの不透明度を下げて補正が弱められる。

まさに一石二鳥!このテクニックは、覆い焼き/焼き込みツール以外でも、写真を直接描き換えてしまう機能には有効な方法なので、覚えておくとなにかと役立つだろう。レイヤーの管理は大変になるけれど。ただし、調整レイヤーがある場合には「補正された状態」で複製を作るのが少々面倒なので、作業手順で確認しておいてもらいたい。

それともうひとつ、「覆い焼き/焼き込みシール」は「モノクロに手焼きの雰囲気」が出せるという効果もある。銀塩モノクロのプリントで覆い焼きや焼き込みを行うと「被写体の周囲」まで派手に明暗が変化してしまうが、それと同じことがこれらのシールで再現可能。いかにも「焼き込んだ」「覆い焼きした」と明らかな仕上がりは、レタッチテクニック的には避けたほうがよいのかもしれないが、それが作風として魅力的ならどんどん試してみるべきだろう。もちろん、「基本を身につけた上」での話だが。

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