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色を再現するためのテクニック

色調が崩れた写真を正しい色に戻す処理は、レタッチの目的のひとつだろう。私自身、「正しい色に直してください」と依頼されることも少なくない。ところが、多く場合の「正しい色」とは思い描く「記憶色」のことで、素材に「忠実な色」というわけではない。指示どおり(可能な限り)被写体に忠実な色に仕上げたとしても、満足してもらえないことが多々ある。

「海が青くない」なとか「肌の色が不健康」などの注文を付けられて。ほかにも「桜が白っぽい」「食べ物がまずそう」「小じわが目立つ」などなど。最後の文言は色とは関係ないけれど、仕上がりが気に入らないと、無関係な箇所にさえ不満を抱かれてしまうものだ。つまり、レタッチを依頼したクライアントは「正しい色」といいつつも「記憶(希望)しているイメージ」を頼りに色を語っているのであり、実際の色を再現するためのレタッチは誤りだったということになる。

ちなみに、実際の海はそんなに青くはないし、肌だって色はくすんでいるし、ソメイヨシノは白っぽいし、月景色だって幻想的に青くはない。でも、世の中には固定した色のイメージがあって、多くのひとはその色を求め、それを自然な色と感じている。話が逸れてしまったが、要するにレタッチでは「真実の色」を求めつつも、実際には記憶している「イメージの色」を求めている可能性が高いという点を覚えておくようにしよう。

ところが、中にはイメージの色は通じず、素材の色を忠実に再現しなければならない場合もある。たとえば、商品の写真とか。製品のカタログの隅に「実際の色とは異なります」という但し書きを見たことがあるかもしれないが、だからといって適当な色であるわけではない。限りなく実物どおけの色をカメラマンやレタッチャーが再現しているのだ。

このように、レタッチする写真の色には「記憶色」と「忠実色」があり、自分はどちらを目指している(要求されている)のかを考えることが大切。それによりレタッチの方向性が大きく変わってしまうのだから、見誤らないようにしたい。

グレーカードで色をリセット

忠実な色を再現する手助けになるのが「グレーカード」と呼ばれるもの。「ニュートラルグレーカード」や「18%反射率グレーカード」などとも呼ばれていて、基本的にどれも同じ。メーカーによって印刷方法や材質に差があるようだが、私には違いはよく分からない。というか、まずはあまり高価ではなく、使いやすい大きさのものを選べばよいと思う。

グレーカードは露出の測定やデジカメのホワイトバランスをリセットする際にも使われているので、すでに所有しているならそれでOK。「レタッチ用グレーカード」などというものはない(と思う)ので、ご安心を。グレーカードがあれば何ができるのかというと、写真に写し込んで「中間調」の色の偏りが補正しやすくなる。写真上のグレーカードの色の「RGBの値」がそれぞれ同じ数値になるようにカラーバランスを補正したり、トーンカーブやレベル補正の「グレー点を設定」スポイトでクリックすれば、偏った色を取り除くことができる。

色の偏りが取り除かれた結果、残るのは「素材に忠実な色」ということ。ただし、これだけではまだ色の偏りが残ってしまうことも少なくない。グレーカードを使った調整はあくまでも「中間調」が中心なので、シャドウやハイライトまでは対処しきれないためだ。再現したい色が中間調付近にあるのならグレーカードだけでも問題はないだろうが、濃い色(シャドウ)や明るい色(ハイライト)の場合には、さらに黒と白の力ードも写真に写し込んでおく必要があるだろう。

写真上の黒、白、グレーの3色を測定し、それぞれのRGB値が揃うように補正すれば、シャドウからハイライトまで偏りのない「忠実な色」が再現できる。また、黒と白の値が「0」や「255」にならないように補正すれば、黒つぶれや白とびが防げるというメリットもある。チャートを使った補正で注意したいのがカメラの設定を「忠実色」や「ニュートラル」など「色に誇張のない」設定にする点。

彩度やコントラストが強められるような設定で撮影してしまうと、色の偏りは取り除けても素材自体の色が(見栄えよく)調整されているので、忠実な色の再現には不向き。撮影ごとの設定が面倒なら、RAWで撮影して現像時にニュートラルな色調に調整するという方法もある。

念のためにグレーカードを使った作業の流れを紹介しておくと、①カードを写し込んで撮影する。次に、カメラも照明も同じ設定のまま、②カードを外して撮影。これで撮影は完了だ。補正時には、①の写真に対して「調整レイヤー」で補正を施し(グレーのRGB値を揃える)、補正した調整レイヤーを②の写真にコピーすればOK・調整レイヤーを使わなくても、①の写真と同じ補正を②の写真に施せれば問題ない。

このようにグレーカード1枚で補正がラクになるのだから、色にこだわる必要があるのなら活用してみたいシールだ。ちなみに、色をニュートラルに戻しておくと、その後、記憶色に仕上げるにも色が作りやすいというメリットがある。

より正しい色を再現するには

忠実な色を再現するにはグレーや黒白のカードを使うだけで安心かというと、そうともいえないのがレタッチの悩ましさ。確かに、白黒グレーの3色で色の偏りは取り除けるかもしれないが、その結果、残る色が被写体に忠実かという問題がある。先にも少し触れたけれど、デジタルカメラの設定を「忠実色」や「ニュートラル」などの誇張のない設定にすると忠実な色が再現しやすくなるのは確か。

しかし、だからといって写真に写った赤が素材の赤と同じとは限らないのだ。カメラの特性もあるだろうし、レンズの光学的な問題もあるかもしれない。いろいろな要素が混在して写真と実物の色の差は生じており、より忠実な色を求めるとなる白黒グレーだけでは対応しきれないのが実情だ。

ではどうするのかというと、今度は「色の付いたカード」を使うことになる。これらのカードは、「力ラーチェッカー」や「マクベスチャート」などと呼ばれていて、四角いカラフルなパッチが並べられているのが特徴だ。カラーチェッカーのすごいところは、パッチごとに色の値が付属している点。たとえばレッドなら「R:175、G:54、B:60」というように色が数値として把握できるようになっている。

つまり、写し込んだチャートの色を測定しながらレタッチすれば、正しい色が再現できるということ。これほど正確な補正方法は、ちょっと他には考えられない。それくらいに精度の高い色が再現できる。しかしながら、便利なチャートにもかかわらず使いこなせないという声もしばしば耳にする。その原因の多くが「生真面目さ」で、すべてのパッチの色を揃えようとするために破綻をきたしてしまうようだ。

はじめにいっておくと、チャートのすべての色のデータを揃えるのはほぼ不可能。というか、あまり意味がない。必要なのは「写っている色」に対しての忠実度なので、写真にない色のパッチまで補正する必要はない。極端な話、赤い被写体の色を合わせたければ、赤のパッチだけ補正すれば色が揃えられるだろう。ここでカラーチャートの使い方を説明しておくと、基本的にはグレーカードの場合と同じ。

チャートを写し込んだ写真と外した写真(使用する写真)を撮影し、チャートを使って色を補正したら、それと同じ補正を使用する写真に適用すればOK。補正の手順としては、黒、白、グレーのパッチで全体の色の偏りを取り除いてから、必要な色に対して補正を施していく。この時、全体の色の偏りは「カラーバランス」や「トーンカーブ」などを使い、各色のパッチは「特定色域の選択」などの「色別」に補正できる機能を使うと仕上げやすい。

カラーのパッチも全体の色を補正する機能で処理したのでは、せっかく整えた黒白グレーのバランスが崩れてしまうので注意すること。カラーチャートを写し込むとすべてのパッチの色に対して補正を施したくなるかもしれないかもしれないが、補正するのは「必要な色とその類似色」程度にとどめておくのがチャートを使いこなすコツだ。

ときには色を測定することも

さてこれまでに紹介したチャートを使った補正はすでに実践しているひともいるだろうけれど、それでも色が揃わないこともある。そして、仕事をしていると、そんな状態でも色を揃えなければならないときがある。プロフエッショナルな領域の話になるが、そんな時はどのように処理するのか紹介しておこう。

グレーカードやカラーチャートを使ってもなお不安なときにはどうするのかというと、可能なら素材の色を直接測定してしまうのが確実。それがダメなら、色のサンプル(DlCやPANTONEなど)から近い色を探し出して写し込むとか、実物を見ながら補正するとか。意外と確実なのが最後の方法で、チャートやサンプルを使うと「ピンボイントの色」しか測定できず、全体を見渡したときに違和感を覚えることがある。

でも実物を前に色を調整していくと「全体」を合わせるように作業するため、結果として的確な色が再現できることが多い。もっとも、実物を見ながらレタッチできるなどかなり限られた状況でもあるので、多くの場合には「素材の色」を測定する方法が用いられるのだが。素材の色を測るにはそのためのシール(測色器)が必要で、しかも、測色器自体の色が狂わないようにするためには信頼性の高い製品を用意しなければならない。

これがかなり高価で、数万円から高いものになると数十万円ほど。価格的な面からも趣味でレタッチするには現実的ではないシールではあるのだが、ディスプレイやプリンターの色も正確に合わせられる点、カメラの色も合わせられる点、メンテナンスして長年使い続けられる点などを考慮すると、上級者やプロを目指すなら所有しておきたい(慣れておきたい)ツールでもある。

測色器の中には素材の色を測定できる機種もあり、レタッチ時にはその数値を元に色を合わせることができるようになる。カラーチャートはあくまでも「パッチの色」を合わせるに過ぎない(パッチ以外の色はずれてしまう可能性がある)が、被写体の色が測定できれば被写体そのものの色が揃えられるため、忠実度はより高くなるということ。

もっとも、色を測定する機能に需要がないためか、筆者の使っているシステムはソフトウエアがバージョンアップされないなどの不都合も出始めている。必要なひとには必須のシステムなのに。

仕上がりは演出にかかっている

さて忠実な色を再現する方法をいくつか紹介してきたけれど、風景やスナップなどの多くのジャンルにおいては、色の忠実度など些細なこと。先にも説明したとおり、イメージによる「記憶色」にまとめたほうが受け入れやすい色彩になるためだ。そして、大切なのはその先で、記憶色を再現したら次は「写真を演出」することでより作品性が高まることを覚えよう。

たとえば、1例として「トンネル効果」などを考えてみるとよい。トンネル効果とは、写真の周囲を暗く落とし込んだ加工のことだが、この処理を加えることでレトロな雰囲気を出すことができる。これが、写真の演出だ。このような加工には賛否両論あるだろうし、筆者も光学的に撮影できるならそうするべきと思っているひとりだが、ひとまずここではその問題は置いておく。

写真を演出する理由は、「より印象的」に魅せるため。もっとも、それだけでは作業がはじめられないと思うので、いくつかの糸口を考えてみたいと思う。演出の基本となるのが「光の方向」で、画面に対して光のある方向を明るく、その反対側を暗くすることで光と影の印象が強められる。このテクニックは、コントラストを強めて陰影を濃くするよりも劇的に見えるため、風景写真からスナップ、ポートレートまで応用の効くテクニックだ。

また、レフ版を当てたように被写体の周囲を「ほんのわずか」に明るくするテクニックも筆者はよく使う。あからさまに明るくするのではなく、自然に視線が誘導される程度の違いを出せば、その分被写体が引き立つし、印象に残る仕上がりになる。このように、どこを明るくして、どこを暗くするか。

その点を考慮するだけでも、写真の魅力は一層増すことだろう。そして、その補正を行う参考になるのが一光の向き」で、これを無視すると不自然な仕上がりになるので気を付けること。もっとも、その達成感を楽しむのなら、それはそれで面白だが。写真をレタッチするのなら、ぜひとも演出を含めた作品の仕上げというものを考えてもらえればと思う。

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