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レタッチ環境の重要性

精魂こめてレタッチしたその作品は、はたして世の中に通じるのだろうか?現在、写真というとほぼすべてが「デジタル写真」を指す。そして、写真を扱うことはすなわち、「デジタルデータを扱う」ことに他ならない。もちろん、古き良きフィルム写真を否定するつもりはないけれど、世間一般に「写真=デジタル」というう図式はもはやあたりまえだ。

そして、本書を手に取った方々もやはり、デジタルで写真を撮り、制作していることと思う。そこで前述の質問だ。作った作品は世の中に通じるのか。デジタルのよいところはたくさんあるのでここでは割愛するが、悪いところというか、大きな欠点がある。それが、環境の孤立化。デジタル写真を見たり編集したりするにはパソコンが必要で、そのパソコンを「標準的」な環境にしておかないと作品の色や明るさが滅茶苦茶になってしまう。

たとえば、暗いディスプレイで適正露出の写真を映し出すと、当然写真は暗く見える。このような場合、レタッチで明るく補正することと思うが、この処理は適正露出の写真を自ら壊してしまうことになる。自分の環境では適正な明るさでも、世間(正しい色の環境)から見ると「明る過ぎ」の写真になってしまうためだ。制作環境の問題はひとげで作業しているととても気付きにくくて、作品を発表する段階になって「世の中との色のズレ」が発覚するという厄介さがある。

ほとんどのパソコンは「写真」のために調整されて出荷しているわけではなく、ディスプレイに至っては「写ればOK」的なチエックで市場に出てくる製品も少なくない。その上、購入後に自らの好みで画面の色や明るさを調整していたとしたら、それはもう「世の中」とはかけ離れたシステムになっている可能性が高い。

ちなみに、ここでいう「世の中」とは「写真の世界(業界)」のこと。とにかく、パソコンで写真を扱うためにはみんなと同じ色や明るさで写真が表示される必要がある。作品には個性を出してもかまわないが、写真を扱う環境に個性は厳禁だ。

まずは部屋の環境を考える

では環境の「個性」をなくし、写真が適切に扱える状態にするにはどうすればよいのか。やるべきことはいくつかあるけれど、まずは「パソコン以外」の環境を見直すことからはじめよう。基本となるのが、パソコンの画面に「外光」が当たらないこと。

そして、画面に周囲が写り込まないようにして、「常に一定の明るさ」の下で作業できるようにすること、これは決して難しいことではなく、外の明るさに左右されない夜に作業したり、部屋の力ーテンを「遮光力ーテン」に変えて太陽光を遮るだけでもかまわない。ちなみに、なぜ外光が部屋に射しているとよくないのかというと、液晶ディスプレイはバックライトの光で映像を映しているため、周囲がバックライトよりも明るいと相対的に暗く感じてしまうから。

これは、デジカメの液晶画面を明るい屋外で見ると暗く見えるのと同じ原理。それに、太陽光は時間や天候によって明るさが変化するため、そのような不安定な環境の下では、ディスプレイだけでなくプリントの色も正しく判断することはできないだろう。外光の問題が解決したら、次は適切な照明を用意しよう。レタッチにおいて照明の役目は「プリント」を見ること。

プリントせずディスプレイで見るだけの環境ならどんな照明を使ってもかまわないが、将来を考えると適切な光の色に慣れておきたい。お金をかけたくないなら、部屋の照明を5000ケルビンの蛍光灯に変えるだけでOK。具体的には、パッケージに「昼白色」と書かれているタイプだ。ただし、蛍光灯の種類は「三波長タイプ」を選ぶこと。蛍光灯には標準タイプと「三波長タイプ」があり、後者のほうが色の再現性が優れている。

ちなみに、色の再現度の高さは「Ra」と呼ばれる値で示されていて、これが100に近いほど正しい色で表示されることが分かる。そして、より良い環境を目指すなら、20ワットの直管型蛍光灯が取り付けられるスタンドを用意して、5000ケルビンの「色評価用」として売られている蛍光灯を取り付けよう。

スタンドは1万円程度、蛍光灯は500円ほどで購入できる。環境が整ったら、レタッチするときには力ーテンを閉めて外光を遮断し、プリントを見るときには5000ケルビンの照明でプリントを照らせばOKだ。すると、ここで新たな問題に気付くはず。画面の色とプリントの色が異なっているという難問に…。

ディスプレイを調整するには

ティスブレイとプリントの色合わせはデジタル業界の長年のテーマでもある。永遠のテーマともいえるかもしれない。あれこれと悩まないために結論からいうと、ディスプレイとプリントの色が完全に一致することはまずない。業務用の環境においてもそうなのだから、一般的な環境なら「似ている」程度に収まれば御の字だ。

もちろん、高価で高性能な測定機器(キャリブレーションツール)を使い、適切なディスプレイとプリンターを用意すればかなり近い色に揃えることはできるが、そのためにはかなりの出費が必要になってしまう。それが理想ではあるけれど、気軽に構築できる環境ではないので、ここでは「今あるもの」を使ってできる限りの調整を施す方法を考えてみよう。まずはパソコン本体について。これはwindowsでもMacintoshでもどちらでもかまわない。重要なのは「ノートタイプ」か「デスクトップタイプ」かで、レタッチ環境を整えるという意味では後者がベター。

ノートパソコンの場合、液晶ディスプレイの明るさや色の調整に制限が出たり、簡易的にしか調整できない場合があるためだ。それに、多くのノートパソコンでは画面の角度を変えると色やコントラストが変化してしまうという問題がある。つまりは、姿勢を変えても色が変化するということ。したがって、ノートパソコンの場合には上下の視野角が広い機種がレタッチ向きといえる。ノートパソコンの場合にも、機種によっては外付けのディスプレイが接続できるものもあるので、できれば高性能なディスプレイを接続したいところだ。

ディスプレイの調整でやるべきことは「輝度(明るさ)」と「色(色温度)」の設定で、中でも「輝度」は露出に直結する最重要項目。ただし、ディスプレイの輝度設定には決められ値がないため、なんらかの基準をもとに自分で決めなければならない。このあたりが、調整の難しさといえる。一般的なレタッチ環境としては、ディスプレイの輝度は卯?120カンデラ程度に設定するのだが、ディスプレイ単体では「カンデラ」の値を知ることはできないし、ディスプレイを置く環境(周囲の明るさ)によっても設定値は異なる。

つまり、環境が分からなければ適切な輝度は決められないということ。本来ならここで「キャリブレーションッール」や「測色器」と呼ばれるディス.プレイを調整するツールが登場するのだが、先にも述べたとおり、「今あるもの」で何とかしたいと思う。それが、「デジカメ」と「プリント用紙」だ。

ディスプレイの露出を測る

ディスプレイの輝度調整に必要なものはデジカメと未使用のプリント用紙(普段使っている光沢紙)。デジカメはなんでもよいわけではなく、できればスポット測光が行える機種を用意しよう。デジタル一眼レフなら問題ないし、コンパクトデジカメでも、絞りとシャッター速度の値が確認できる機種ならとりあえずは大丈夫だ。これから紹介する作業の目的は、プリントとディスプレイの明るさを近づけ、ディスプレイを適切な輝度に調整すること。

ディスプレイの「絶対的」な輝度が設定できないなら、プリント用紙の紙白を参考にディスプレイの輝度(白さ)を合わせるというわけだ。この調整を行うことで、ディスプレイの輝度が安定するだけでなく、プリントと色が近づくというメリットもある。ティスブレイの明るさの安定性(いつも同じ明るさで表示されること)も、プリントとの色の差も、デジタル写真においてはとても重要なことなので、自分の環境でぜひ試してもらいたい。

道具が準備できたら、まずはプリント用紙の露出を測ることからはじめよう。カメラをスポット測光(なけれはフレーム全体に紙の白が表示される状態)にして紙の露出を測光。絞りとシャッター速度の値を覚えておく。たとえば、lSO100で絞りがf8のとき、シャッター速度が1/8秒だったとすると、この露出がディスプレイの輝度を調整する目安となる。

そして、この露出値はこれからディスプレイの調整で使い続ける大切な設定値でもある。ここでの注意点は、プリント用紙の露出を測るときには「プリントを見る」ときの明るさ(照明)にする点。これを怠ると、プリントとディスプレイの明るさが合わなくなってしまう。プリント用紙の次は、ディスプレイの露出を測光する。フォルダーの白い部分などを画面に表示したら、プリント用紙のときと同じようにカメラで測光。

このときも、照明はプリントを見るときの状態にしておくようにしよう。実際はディスプレイ自体が光っているため影響は少ないが、念のため。プリント用紙とディスプレイの露出値が揃っていれば問題ないのだが、ほとんどの場合異なっているはずだ。そこで、互いの露出値を揃えていくわけだが、これにはディスプレイのOSD機能を使用する。ノートパソコンの場合には、明るさ調整機能を使えばOKだ。

カメラでティスブレイの露出を測りながらOSD機能で輝度を調整し、プリント用紙と同じ露出値に揃えれば設定は完了。これで、ディスプレイの明るさは環境に合わせて適切に整えられたことになる。これは多少アバウトな調整方法ではあるけれど、何もしないディスプレイよりははるかにまし。それに、月に一度ディスプレイにカメラを向けて露出を確認することで、安定した明るさで表示される環境が得られるのだから、試して損はないはず。

ディスプレイの色を整える

ディスプレイの調整でもうひとつ大切なのが「色温度」。つまり、青っぽい/赤っぽいといった色の偏りのこと。ただし、この調整はすべてのディスプレイで行えるわけではないし、ノートタイプのパソコンではできない場合のほうが多い。まずは、自分のディスプレイが色温度の設定に対応しているかを確認しておこう。ディスプレイの色温度の設定は、「プリントを見る蛍光灯と同じ色温度」にするのが鉄則だ。

プリントを見るための照明が5000ケルビンなら、ディスプレイの色温度も5000ケルビンに設定する。これで画面上の写真が5000ケルビンの色温度で表示され、5000ケルビンの蛍光灯で見るプリントと同じ色になるという仕組みだ。もっとも、完全に色を揃えることはできないので、ある程度の妥協は必要だが。また、ディスプレイのOSDで調整できる色温度はさほど正確ではなく、しかも経年劣化で変化してしまうため、どうしても誤差が生じてしまう。

これはディスプレイとプリントの色が合わない理由の一因にもなっていて、より精度の高い環境が必要な場合には「キャリブレーションツール」でディスプレイの色温度を測定して補正しなければならない。プリントを作らずにすべて画面上で完結するような環境なら、ディスプレイの色温度は「6500ケルビン」に設定しておけばよいだろう。

6500ケルビンは、パソコンやWebで標準となっているsRGBの写真が適切に表示できる色温度なので、色に関する無用なトラブルが避けられる。このように本来なら面倒で費用がかかり、かつ難解なディスプレイの調整も、カメラがあればある程度よい状態が維持できることを覚えておこう。そして、同じ環境を維持しておけば、ちょっとした色や露出の変化に敏¥感になることができる。強いては、作品の微妙な仕上がりにも好影響をもたらすことだろう。

キャリブレーションツールについて

少々蛇足になってしまうがせっかくなので「キャリブレーションツール」に関しても触れておきたいと思う。キャリブレーショツールとは、ディスプレイやプリンターの色を調整して、適切に表示できるように補正するシステムのこと。安い製品だとディスプレイだけしか調整できないが、ある程度高性能なもの(分光式)ならディスプレイとプリンターの両方を調整して、両者の色を近づけることができるようになる。

キャリブレーションッールを選ぶときの目安が一測色器」と呼ばれる色を測る機械のタイプだ。測色器には「フィルター方式」と「スペクトル(分光)方式」があり、お勧めなのは後者のタイプ。フィルター方式は安価に購入できる反面、フィルターが劣化しやすく、管理が悪いと正しい色で測定できなくなってしまう。また、プリンターの色が調整できないのもデメリットだ。対してスペクトル方式は、より高精度に色が測定できる上、印刷物の色も測れるのでプリンターも調整できる。

その分高価だが、どうせなら長く使える「スペクトル方式」を選びたい。キャリブレーションツールの代表的な製品がx-nite社の「I1」「colormunki」方式で手頃な価格なのが「colormunki PHOTO」。ディスプレイとプリンターの色が簡単に調整できるため、プロの写真家の中でもユーザーは多い。

またこれらの測色器を持っていれば将来「ハードウェアキャリブレーション」に対応したディスプレイを購入したときにディスプレイの性能をフルに生かした調整が施せるようになる。キャリブレーションッールは今すぐ必要なものではないかもしれないけれど、将来のために知識として仕入れていたほうがよいことは確かだ。

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